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異種間恋愛

第19章 初めての恋

「ラドゥ。逃げたりしないから、もう部屋から出して」
「起きてたのか」
「うん」
 あれからラドゥは私がラドゥの部屋から出るのを禁止した。
 逆らえるわけもなく私はそれに従う。部屋と言っても一般的な家と同じ造りをしているから生活に支障をきたすことはない。
 でも、レオにもストラスにさえも会えないのは辛いし、なによりもラドゥが部屋にいない間ずっとひとりでいると気が狂いそうになる。
 レオを傷つけておきながら何もできない自分が腹立たしい。
 もう3日が経つ。
「お前は俺の玩具だ。玩具は自ら動く必要がないだろう。玩具箱にずっといればいい。俺が時々遊んでやる」
「玩具って……」
 滅茶苦茶なラドゥの言い草にはもう慣れてきてしまった。
 遊んでやる、なんて言いながらもラドゥは何か忙しいのかほとんど部屋にいなかった。
 朝目覚めるとラドゥはすでにおらず、私が寝てからラドゥが帰ってくる。私は寝たふりをしたままその足音を聞いていた。
 ゆっくりと忍び足のラドゥはなるべく音をたてないようにバスルームへ行き、しばらくすると私が寝ているベッドに慎重に入ってくる。
 私がベッド以外の場所で寝ることもラドゥは禁止していたから自ずとラドゥとふたりでベッドに入ることになっている。
 ラドゥの重みをベッドが受け止めたところで私は目を開けてラドゥに聞いた。
 我儘な王子は少し驚いてからいつもの調子に戻った。
「ストラスは心配してない?」
「あいつが心配してないと思うのか?」
「……大丈夫って伝えておいて」
 ラドゥの方へ向きをかえて横になる。
 そこで初めて気付いた。
「ラドゥ? 髪の毛乾かしてないの?」
「あ? 面倒だ」
 そんな一国の王子が濡れた髪のまま寝ているなんて情けない……。
「乾かさないと風邪引くし、髪も痛むわよ。乾かしなさい」
「……」
 ラドゥは目を閉じて私の言葉を無視する。
 要らないことまで喋ったかと思うと、急に黙ったりもする。本当に我儘で自分勝手。
 私はベッドから降りた。
「どこへ行く」
 ラドゥはベッドのバネが揺れたことに気が付いて、慌てたように身を起こした。小動物が怯えているように見えた。
「タオル取ってくるの」
 バスルームでタオルを手にし、ベッドに戻るとラドゥはベッドに腰掛けたまま目を閉じていた。

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