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異種間恋愛

第19章 初めての恋

 私はベッドに乗るとラドゥの髪についた水分をタオルで吸収していく。
 私がラドゥの頭をタオルで包んだり、揺らしたりしている間ラドゥはおとなしくされるがままになっていた。
 こうしているとすごく可愛いのに……。
 真っ白な肌と伏せられた睫の長いこと。
 頬もほんのり赤くてまるで少女のよう。
 ほんのり……?
 いや、違う。ほんのりなんてものじゃない。林檎のように真っ赤に染まっている。
 私は嫌な予感がしてラドゥの額に手を当てた。
「やめろっ」
 ラドゥに手を叩かれた。
「馬鹿! 熱があるじゃない!」
 私はもう一度ラドゥの額に手をあて確認した。今度は叩かれなかった。
 そんな気力も残っていないというようにラドゥの肩が上下し、荒い息を繰り返す。
「すぐ治る。ほっておけ」
「そんなことできるわけないでしょ! リュカを呼ぶわ」
 私は再び立ち上がろうとするとラドゥの弱弱しい手がそれを止めた。
「行くな」
「すごく辛そうよ?」
「よくあるんだ。薬ならあの棚に」
 私は急いで薬らしきものを棚から出すと水と一緒にラドゥの口に押し流す。
 ごくりという音とラドゥののど仏が大きく動き、薬が体に入ったことを確認した。
「もう髪は乾いたし、横になって寝て?」
「……嫌だ」
「へ?」
 思いもしない返事。
 ラドゥは真っ赤な瞳をこちらに向けて少し頬を膨らませていた。
 潤んでいる瞳に見つめられてはどうすればいいのか分からなくなってしまう。大嫌いな奴なのに、可愛いなんて思ってしまう。
「今、この状態で寝ればお前が逃げる」
 何を馬鹿なことを言っているんだろう。
「こんな状態の人を放って逃げれるわけないでしょう。逃げるならラドゥが元気な時に逃げるわよ」
「……じゃあ、ずっと熱あるふりをする」
「はあ?」
 まるで駄々っ子だ。
 熱のせいかいつもより口調が柔らかく、人をからかう余裕もないのか素直になっている気がする。
 私はラドゥの体を横になるように促すと、そっと布団をかけた。
「いつから体調悪かったの?」
「覚えてない」
 今日の朝、目が覚めたらもうラドゥはいなかった。
 でも、テーブルに飲みかけの水がはいったコップがあった気がする。その横に丸められた小さな紙屑のようなものがあった。
 私はラドゥに今しがた飲ませた薬の包装紙を見る。
 ああ、これだ。

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