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異種間恋愛

第19章 初めての恋

 本当は何を思っていのだろう……。
 いつも口にする皮肉も意地の悪い条件や嘘はラドゥの中のどんな思いから生まれ出てきているのだろう。
 もっと……。
 もっとラドゥを知りたい。
 ひとりの人間としてのラドゥを。
 それに、あの肩にあった複雑な絵のような痕はなんなのか本人から聞こう。

「ラドゥ。元気になったら私に全て教えてね」
「……」
 返事がくるはずもなく、ただ寝息が不規則に聞こえてきていた。
「よくなーれ」
 そう繰り返しながら私はラドゥをとんとんとん、と撫でてやる。


「おい、起きろ」
「……ん? あ、おはよ」
 想い瞼を持ち上げるとラドゥが不機嫌な顔でこちらを見上げて睨んでいた。
「なんで座りながら寝てるんだ。逃げる準備か?」
 どうも私がベッドの上で膝をまげて座っているのが気に食わないらしい。どうしてそんなネガティブな方向へ想像が膨らむのか感心すらしてしまう。
「逃げないって言ってるでしょ」
「……ふん」
 鼻をならしてそっぽを向いたのに、ラドゥは横になったまま立ち上がろうとはしない。
 私はラドゥの額に手を伸ばす。
「熱はまっしになったみたい」
 そうは言ってもまだ顔色も悪く、完全に治ったわけではない。
「どけ。支度をする」
「ちょっと! まだ寝てなきゃだめっ」
 ベッドを抜け出そうとするラドゥの肩を押さえるが、ラドゥは冷たい視線で私を睨んだ。
「俺は暇じゃない」
「今日も仕事があるの? どうしても休めないの?」
 私の問いに答えることなく大きなため息をひとつ吐き出すとラドゥは私の手を振り払って立ち上がった。
 私も急いでベッドから抜け出してラドゥを追いかける。
 バスルームに入ったラドゥの後ろにくっついていくと、さすがに嫌そうな顔をした王子が私の顔を鏡越しに睨みつけてきた。
「気持ち悪い。ついてくるな」
「今日くらい休めないの? 私に手伝えることじゃないの?」
 さっきから質問ばかりしているのにラドゥはまともに答えてくれない。

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