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異種間恋愛

第3章 不器用な優しさ

 木の傍に腰を下ろすと暗闇に慣れてきた目で周りを観察する。
 木から数メートル離れたところには草木が密集して生えているというのに、この大木の周りだけが綺麗に円を描いて整えられた絨毯のような短い草しか生えていないのだ。
 陽の下で見れば緑色の絨毯はどれほど美しいだろうか……それに、地面に生える草のおかげか座ってもお尻が痛くならない。
 両脚両手をそのまま投げ出し仰向けに寝転がってみても身体が痛むことはなく、日中陽に照らされた草のいい香りが鼻をくすぐる。
 身体を大地に預けると安心できて瞼が重くなってきた。走ったり泣いたり、森を歩き続けたせいで私は結構疲れているようだ。
「ここで寝ろ」
 いつの間にかどこかへ言っていたレオは大きな口に藁をたくさん咥えて持ってきて、それを地面に下ろすと前足で均すように藁を踏みつけた。
「あ……ありがとう」
 レオの気遣いに心が温まって涙腺が緩むのを必死に堪えながら起きあがって藁の上に寝転がった。
「すごい気持ちいいわ」
「そうか」
 レオは私が横になるのを確認すると少し離れたところへ身体を下ろした。
 昨日までは大きなベッドでストラスとお母様お父様におやすみの挨拶をしてから寝ていたな……沈黙があると余計なことを考え始めてしまう。
 もう戻れない生活は裏切りの上にあったとしても私には本当に宝物のような日々だった。
 でも、思い出ばかりに浸っていてもなにもならない。これからは何だって自分の意思があれば家族や村のことを考えずに自由にできるのだから、よく考えて前へ進もう。
「何を考えている?」
「……え」
 瞼を開けて首を捻ると暗闇で輝くブルーサファイアの瞳が私のほうを見ていた。
「ん……なぜ、泣いている」
 私は自分の顔を触って初めて泣いていることに気がついた。
 こんなにすぐに泣くなんてレオはきっと鬱陶しいと思っている、それにこれからのことを考えようとしていたのに泣いているなんて、自分がすごく情けない。
 すぐに返事をすることができず空を見上げて驚いた。
 さっきまでちゃんと見ていなかったのが信じられないくらい美しい星空なのだ。
 ここでは村の中にいるときにわずかな輝きしか放てなかった星も堂々と光り輝いているようだ。
「星が……美しすぎて泣いてるのよ」
 レオは小さく「そうか」と言って空を見上げた。

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