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異種間恋愛

第6章 アスリアス王国の秘密

「俺は同じ場所に居座ることはしない。そろそろ別の場所へ移ろうと思っていた。それに、ラーナの様子はずっと探っていた。でも、動物からの情報だけではよく分からない。だから、お前を利用しようと思う」
 レオの言っていることは納得ができた。
 しかし、レオはどうしてそこまでして人間のことを気にかけるのだろう。
 ラーナの話をしてくれた時だって、私の心ない質問にすごくむきになっていた。
 人間より人間のことを考えるライオンか……もしかして、神様の化身? なんて馬鹿らしい考えが浮かんだ。
「利用……」
 レオがその言葉を選んだのは優しさから来るものだろう。
 私に気を遣わせないように。
「お前が迷惑を掛けていると感じているのはどうでもいいが、俺は好き勝手にお前を利用させてもらう。それでどうだ?」
 本当にレオは不器用なのか器用なのか分からない。
「利用されてあげても……いいよ」
 レオに背を向けて、できるだけ静かに鼻をすする。最近は涙腺が物凄く緩んでいるのかもしれない。
 また泣いているのか、なんてもう言われたくない。鬱陶しいと思われるのが恐い。
「利用するんだから、対価が必要だろ。俺がお前を利用するから、お前は俺を……」
そこで言葉が切れた。レオが鼻から空気を身体に取り込む音が聞こえた。
「もっと頼れ。いいな?」
「あのっ、でも」
「うるさい。もう決めたことだ。ほら、置いて行くぞ」
 森に住む私たちは荷物も何もなくて、すぐにどこへでも行ける。
 そこにすごく魅力を感じた。
 でも、それよりも目の前を歩く黄金の獣に……。
「もおっ、自分勝手なんだから」
 私は憎まれ口を叩きながら、レオが先にいってくれたおかげで目から零れおちた滴を気づかれることなく拭うことができた。
 きょろきょろと周りを見回し、私の足の上に乗ってしがみついてきたジャスミンに微笑みかけると、肩に乗せてあげた。
 しっかりとワンピースの布に捕まっているのか、まさに一心同体といった感じでとても可愛らしい。
「本当に置いてくぞ?」
「あ、待ってよっ」

 もっと頼れ、というレオの低い声が頭に響く。
 ありがとう、と心の中で呟いて私はレオを追いかけた。
 私はこれからのことなど、なにも心配していなかった……。

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