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異種間恋愛

第6章 アスリアス王国の秘密

「本当に行くのか?」
「うん。実際に見てみたい。百聞は一見に如かずでしょ?」
 私はレオに心配させまいと片目を瞑ってみせた。
「目が痛むのか?」
 ふざけている様子はなく立派なたてがみを揺らしながら頭を傾けたレオに少し怒りが沸いた。
「……とりあえず、行ってみたいの」
 元居た場所には戻れない。一度居場所をなくしてしまえば、それはもう生まれ変わったかのように自由に行動ができるということだ。
 それなら、今やりたいことをしたい。誰かの為に生きてみたいと考えた。
 それに元々都には行こうと思っていたのだし。
「だから、レオ……」
 言葉が続かない。なんと言おうとしたのか、自分に問う。
 お別れの言葉? ありえない。レオと別れるなんて……いや、レオに迷惑をかけすぎているのではないか。どこにいても誰かに甘えることしかできないの?
 
 そんな自分が大嫌いだ。


「分かった」
「え?」
「この森は恐ろしいほど広い。5日ほど歩けばラーナの近くまで行ける。ま、お前の足じゃ10日はかかるだろうがな。そうと決まればさっさと行くぞ」
 レオはそう言うが早いかのっそりと立ち上がった。レオが案内してくれるつもりなのかもしれない。とんでもない。
「ちょっと待って!」
「なんだ、もう心変わりしたのか?」
「レオにこれ以上迷惑は掛けれない」
 自分が情けなく、とてもレオの姿を直視できない私は地面を見つめたまま言うと、レオの動きがぴたりと止まった気配がした。
「迷惑?自惚れるな。俺はお前の面倒を見ているつもりはない」
「でも、いつもの木のところから離れてラーナに行くなんて……」
 レオの冷淡な言葉に驚いて顔を上げると真正面から見つめてくる大きなライオンがいた。
 その存在の安心感になにもかも全てを預けたくなってしまう自分の弱さを握り潰すように拳を強く強く握った。

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