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異種間恋愛

第8章 動き出す捜索

 悔しくて悔しくて声が出せない。
 僕がついていながらどうして……リアをこんな目に遭わせることになったのだ。
 ビビアンが真っ赤な爪をした指で僕の頬に伝った涙を拭おうとした。顔にはまたも気味の悪い笑みを浮かべて。
 病室に乾いた音が響く。
「きゃっ」
 細い手を振り払った力が無意識に強まっていたようだ。
「悪いけれど、今日はもう帰ってくれないか。お礼ならまた今度……リアが見つかった時にでもするよ」
「そんな」
 放心状態のビビアンにさっさ去れという意味でいつもの笑顔を作って見せてやれば、ビビアンは顔を赤らめて立ち上がった。
「わ、分かりましたわ。お大事になさって下さいませ。あ、ここにクグロフ置いていきますわね」
「うん」
 扉が閉まる音がして数秒経って僕はベッドから抜け出した。
 とりあえず、一応望みは捨てないで隣町周辺にリアがいないか確かめなくては。
 その次は都だ……。

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