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異種間恋愛

第9章 憧れの都

「レオ……」
「なんだやっと言う気になったのか。待ちくたびれた」
 歩き続けて10日ほどが経った。数えるのもしんどくておおよその日数だけれど……。
 休んだ日は雨だったあの日だけで、それからはずっと歩きっぱなしだった。
 そして、足がまたしても悲鳴を上げだしたのは昨日のことだった。夜休めば治ると信じ、我慢したが今日になっても一向に痛みは治まらない。というよりは酷くなっている。
「ご、ごめんなさい。足が……」
 ジャスミンが首を傾げてた後、励ますように頬に小さな身体を擦りつけてくる。
「当り前だ。人間の身体でよく頑張って歩いたな」
 レオが私を……褒めた?
「川の方まで行って今日はもう休もう。ラーナはすぐそこだからもう急ぐことはない。ほら、乗れ」
 いつかレオの背中に乗ったときのことが思い出された。すごく心地よかったっけ。
「ありがとう。レオ、でも少しだけなら歩けるわ。川まででしょ?」
「やっと頼ったかと思えばこれか……。いいから、乗れ」
 うんざりしたような声で言われば、レオを困らせているような気がして遠慮なく従うことにした。
 太陽の香りがするレオの背中に跨る。
 全体重をレオに預けていると思うと恥ずかしい。
「重くない?」
「本当にお前は余計なことを考えるのが好きだな……。全然、重くないぞ」
「レオって走ったらどれくらいの速さになるの?」
 ふと気になったことを聞けばレオが笑った。
 ジャスミンは急に私のワンピースの内側に入り込んで、アンダードレスの胸元にはいってしまった。可愛いけれど、くすぐったい。
「走ってみるか?」
「え?」
 私を乗せたまま? そう聞こうとしたけれど、その前にレオは力強く地面を蹴っていた。
「いやーーーーっ」
「しっかり掴まれ。あと、耳元で大声は出すな」
 周りの木々が物凄い速さで通り過ぎて行く。風が真正面からぶつかって前髪が割れ、後ろ髪が靡く。恐ろしいので目を瞑ってレオのしっかりとした胴体に腕を伸ばすので精一杯。
 ジャスミンが私の服の中に隠れた意味が分かった。
「やだっ。止まって止まって!」
「ははっ」
 レオが低く笑い、スピードを落とした。
 ゆっくり目を開ければ、川があった。

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