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異種間恋愛

第9章 憧れの都

「レオ……」
「なんだ?着いたぞ」
「レオの馬鹿ーっ」
 思いっきり叫んで、レオの背中から降りようと試みた……が、腰が抜けて脚が動かない。
「なんだ。お前が走れって言うから」
「言ってないわよ」
「そうか?」
「そうよ」
 ジャスミンがきょろきょろ首を動かしながら服の中から出てきた。するりと地面に降りた。リスの賢さはやっぱり私より上だ。
「それより、ほら。早く足を見せろ」
 レオが地面に伏せって降りやすいようにしてくれる。それでも私の身体は動かない。
「どうした?」
「そ、その」
 速すぎて腰が抜けたなんて言えない。恥ずかしすぎる……。
「もしかして……」
「もしかして?」
「もう一度走ってほしいのか?」
 顔は見えないけれど、きっと大きな口を意地悪く歪ませて笑っているに違いない。
「そ、そんなわけないでしょ!」
 また走られては敵わないと身体が反応したのか、急に脚がうごくようになったた。
「なんだ、つまらない」
 すぐさまレオの背中から降りれば、レオは猫のように身体を伸ばしたあと川に入った。
「足見せてみろ」
「う……はい」
 足を丁寧に舐められたことを思い出し心臓が騒いだ。
「ナーラに入る前にしっかり治しておかないとな。俺はいっしょには行けないから……何かあったときにお前が走れる状態にしておこう」
 ラーナで何が待っているというのだろう。私はただ都の様子を歩きながら見て、確かめようとしているだけなのに。
 でも、確かめて何ができる? 酷い状況だと分かれば私はどうするのだろう。たかがひとりの力では何も変わらないではないか。
「また余計なことを考えているだろう」
「レオ、だって……」
「何事も知ることから始まる。知らなければ何も始まらない。違うか?」
 ううん、違わない。その通りだと思う。
 私は首を横に振った。
 レオは黙って頷くと黄金の尻尾を揺らした。


その日の夜は足の痛みもなくぐっすり眠ることができた。

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