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異種間恋愛

第10章 昔話と現在

「昔……100年以上前の話じゃ。アスリアス王国は豊かだった。
 自然と衰退していったブラン王家に代わって勢力を伸ばしたシャレット王家がやっと安定した時期に入って、国政も穏やかで疫病が流行るわけでも、日照りや雨不足で農業が不作になるわけでもなかった時代。
 人はいつでも一昔前の時代を懐かしんだり、『あの時代は良かった』なんて言うが、それはいつの時代も同じだ。だから、わしも感傷に浸っているだけだと思うかね?
 いや、違う。今の国は歴史上で見ても酷すぎる。
 他の国では大きな戦争が終わった後なんかに戦争前の時代を懐かしんだりするが、あれは戦争っていう悲惨な出来事があったから余計にその戦争を知らない前の時代に憧れるんだろうねえ。
 今のアスリアス王国はその戦争の時代にあたるんだと思う。
 戦争ってのは人殺しだ。アスリアス王国は今まさに人殺しをしている。
 
 話を戻そう。
 その安定した時期の王はブルーノといった。
 頭はよく切れるし、他国とも上手く付き合うことのできる王で民にも優しかったと聞いておる。
 しかし、ブルーノは50歳を目前にして死んだんじゃ。なぜかは……分からん。
 その後に王の座を継いだのは息子のグラドだった。
 グラドは実は側近たちの間では次期王になるのは難しいと言われていた。だが、彼は王になった……悪魔と契約してな。
 その契約の内容は知らない。だが、王になる為に邪魔な者を消して、自分が王になったんだ。
 その日からは地獄のような日々だ。
 グラドの城での贅沢ぶりには周りの王族たちも目を見張るものだった。
 父であるブルーノは倹約家で知られていたのに、その息子が突然狂ったように贅沢をするようになった。
 その次の王になったグラドの息子のファビオも同じだった。この頃には、わしも生まれておってよく覚えておる。
 幼いながらに不思議に思っておったんじゃ。毎月城からの使いが有能な者を連れていく。
 多い時は一気に50人ほど連れて行くんじゃ。そんなことが毎月毎月繰り返される。
 城の中がどんなに広かろうとどんどん増えていく人数を収容するほどの面積はないはずだと……。
 だが、城に行く者たちが沢山いるのと同時に城から帰ってくる者が沢山いることに気付いた。
 真夜中に目が覚めて見てしまったことがあったんじゃ。

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