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異種間恋愛

第12章 獣の正体と契り

 ここまで言ってしまったならもう歯止めがきかない。
「誰かを本当に愛しいと思ったことがなかったの……。レオと会うまでは」
「俺は……」
 拒否の言葉を言われるのが恐くて、レオの大きな口を両手で蓋をした。
 開きかけていた口がそっと閉じられた。
「ねえ、そろそろ教えて? レオのことについても……」
 そう言ってそっと手を離す。
「……恐いんだ」
 うなだれたレオを見たのは初めてで正直、心の芯が凍るような恐怖と不安を感じた。レオがなにかを恐がるなんて。
「なにが恐いの?」
「俺が何者なのか分かって、お前に嫌われるのが」
 レオを嫌うなんて、ありえない。なにがあってもこの気持ちは揺らがない。
「そんなことで恐がらないで。私の気持ちは変わらないわ。レオが誰であろうと、私は今までのレオを……。だから、お願い。知りたいの」
「そうか、なら話そう。まず、俺が誰かだ。俺は人間だった」
 やっぱり、人間だったのだ。そう知るとすごく安心した。獣を愛してしまうことに多少後ろめたさはあったのだ。
 でも、人間が100年以上も生きる獣になるなんて何があったというのだろう。
 私はレオのたてがみに抱きついた。
「そのままで聞いてくれ。俺は……弟にこんな姿にされたんだ。理由は王位継承を奪うためだろう。グラドは小さい頃から野心家でプライドが高かったから、俺が王になると決まった時に悪魔と契約をしたらしい」
 意味が理解できなかった。
「グラド?」
 出てきた名前はレオと縁もゆかりもないものだと勝手に考えていたせいで頭の中がかき回される。
「ああ、俺はグラドの兄だ……」
 こちらを見ないで沈みゆく夕日を眺めながら話すレオ。
「じゃあ、あなたは……」
「王子だった。元、だがな」
 嫌に冷静な頭が家系図を作成し始める。グラドは私の曾祖父。その兄、となればそれは曾祖叔父にあたる。レオは私の曾祖叔父……。そんなことはどうでもいいだろう、と自分でつっこみをいれる。
「名前は……?」
「ティオン・ガイア・シャレット。俺の代まではミドルネームは洗礼名なんだ。今の王族に洗礼名がないのは悪魔と契約したひとつの代償だろう」

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