契約彼氏
第3章 *越えた一線...
「朝練間に合う?」
「うん、余裕~♪」
土曜日の朝に職場近くを歩いてることに違和感があって、気持ち的にもあんまり嬉しくない。
「今日は両替やってないね(笑)」
「昨日土日の分も両替したでしょ?」
「美玲ちゃんの窓口じゃなかったけどねー。
なんか最近僕のこと避けてる?全然窓口当たらないんだけど。」
銀行の前を通るなり、ほんの少しいじけた夏目くんが無性に可愛く見えた。
「しょうがないじゃん。
私には夏目くんの番号札わからないもん。」
「唯一話せる時なのになぁー。」
私も同じこと思ってた。
窓口に来た夏目くんと周りの視線を気にしながら話すあの瞬間が、禁断っぽくて嫌いじゃない。
「じゃ、行ってくるわ!」
商業施設の前で立ち止まり、いつもの愛らしい笑顔を見せた夏目くん。
ここの5階が夏目くんの職場―・・・
朝の太陽が綺麗な金髪をキラキラと照らす。
「頑張ってね。」
「なんか久々だわ。
そんな風に見送られたの。」
夏目くんの目に映る私は、フラれた可哀想な銀行員にしか見えてないんだろうな―・・・
「・・・っ!!!
やっば、ゆきさんから電話だ!
じゃあ行ってきます!!」
携帯を耳にあてながら走って行った夏目くんを私は黙って見送った。