契約彼氏
第3章 *越えた一線...
「疲れたー」
「外暑いんだろうなぁー」
社員通用口のドアを開けると、むわっとした熱気を全身に感じた。
「あつっ・・・・」
駅に向かおうと人混みに紛れた時・・・・
『美玲?』
自分の名前を呼ばれて立ち止まった。
辺りを見回し、声のした方を注意深く見る。
「亮くん・・・!」
「え?」
優子の声に前を向けば、ちょっと気まずそうに歩み寄る亮ちゃんがいた。
「なにしてんの・・・・」
『美玲を待ってた。』
「仕事は?」
こんなに早く仕事を切り上げた亮ちゃん初めて見た。
前からやろうと思えば早く帰れたんじゃん。
ますます、浮気は1回や2回じゃないと疑ってしまう。
「・・・じゃ、私はお先に。」
空気を読んだ優子が気まずそうに足早に立ち去った。
人通りの多い繁華街で、周りの音が遮断されたように二人だけで見つめあう。
『ちょっと話そ?』
「・・・・うん。」
今さら何を話すのかわからない。
でも、会うとやっぱり気持ちが揺らいでしまう。
あの時は、二度と許さないって誓ったはずなのに―・・・