契約彼氏
第3章 *越えた一線...
「夏目くん、私あっち・・・・・」
お店を出ると駅の方を指差す美玲。
「タクシーで帰ろ。」
「え、大丈夫だよ?
ほんとに帰れるから!」
「タクシーなら乗ってるだけで着くし。
俺は電車で帰るからさ。ね?」
道路にはたくさんの空車のタクシーが止まってて、夏目くんは先頭のタクシーの窓ガラスを軽く叩いた。
それと同時に開いた後部座席のドア。
「ほら、乗って。」
背中を押されて乗るように促されるけど、夏目くんの腕を掴んでそれを拒んだ。
「とりあえず駅まで行ってもらって、そこからは説明した方がわかりやすいかも。
これ、渡しとくから。」
手に握らされたのは1万5千円で、それに驚いた瞬間、詰め込まれる形でタクシーに乗せられた。
「すみません、お願いします!」
「あ、やっ、・・・夏目くん!」
「・・・?」
「一緒に乗って。お願い。」
美玲の真剣な眼差しに陽飛は黙って顔を覗きこんだ。
「・・・・いいよ。一緒に帰ろ。」
何かを悟ったのか、美玲の手をぎゅっと握りしめ隣に座った陽飛。
それに安心したのか美玲は運転手さんに行き先の最寄り駅を伝えた。