契約彼氏
第5章 *葛藤...
夏目くんの手際の良さは新人とは思えないほどで、あっという間に可愛く髪型をセットしてくれた。
「メイクも直していい?」
「え?
あ、うん。いいけど。」
鏡越しに目が合う夏目くんは、やっぱり美容師さんだなって思う。
「目閉じて。」
ゆっくり目を瞑ると、柔らかい筆が瞼の上を滑る。
誰かに化粧をしてもらうなんて成人式以来でドキドキして嬉しくなった。
「美玲ちゃん、ほんと肌綺麗だよね。」
「そう?」
「うん。赤ちゃんみたい。」
目を閉じたまま耳元で聞こえる夏目くんの声に胸が高鳴る。
「一回目開けてみて。」
ゆっくり目を開けると鏡に映る自分を思わず見つめた。
「やっぱりゴールドのシャドー似合うね!」
私以上に嬉しそうに笑う夏目くんと目が合うと私もつられて微笑んだ。
「夏目くん、シンデレラの魔法使いみたい。」
「魔法使い・・・?」
「私を綺麗にしてくれて、魔法がとけるといつもの私に戻っちゃう。
夏目くんは私を可愛く変身させる魔法使いだね。」
嬉しそうに笑う美玲を鏡越しで見つめる陽飛。
手に持つシャドーを片付けると、無言で美玲の髪を整え始めた。
「じゃあ、最後に魔法をかけるから目瞑って?」
「え?」
前髪をいじられて自然と目を閉じた瞬間・・・・
ちゅっと唇に柔らかいものが触れた。