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桜の夢

第2章 夜桜

「ありがとうございました~」


私は出来る限りの営業スマイルでお客さんを見送った。

あぁ~顔吊りそう…。

私が春休みから始めたのは、とんかつ屋のホールのバイトだった。

毎日油の臭いで嫌になるけど、まかない付きだし、そこそこの時給だから、まあまあかな?


「東城さん、お疲れ」


後ろから声をかけられ振り向くと、バイトの先輩の船橋さんだった。


「お疲れ様です。船橋さん」

「あははっ。いつも真面目だね。そんなに固くなくていいのに」


私としては、別に真面目なつもりはない。

ただ単に、不真面目なとこが露見しないようにしているだけである。

というか、船橋さんの方がもっと真面目だと思うんだけど…。

いつも周りを気遣ってくれて、客受けもいい船橋さん。

この人のお陰で、だいぶ楽に仕事が進められる。

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