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喪失、そして再生~どこか遠くへ~My Godness完結編

第1章 ♣ここではないどこかへ♣

 悠理は大きな溜息をついて、長めの前髪をくしゃっとかき回した。過去と決別したくて故郷を出てきたというのに、自分は何という情けない男なのだろうか。
 ここまで来て、まだ早妃や実里の面影を夢にまで見るとは!
 何の気なしに腕に填めたままの時計を見ると、既に七時を回っている。
 いけない! 悠理は慌てて飛び起きた。確か、網元の話では三時には起き出して海に出るのではなかったか? せっかく早々と漁に連れていって貰えるというのに、初日から寝坊して遅刻では、すぐに愛想を尽かされて追い出されるかもしれない。
 元々パジャマなど持ってきていない、気のみ着のままで眠るつもりだったので、服装はTシャツとジーンズのままだ。悠理は蒼褪め狼狽えて部屋を飛び出した。

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