
喪失、そして再生~どこか遠くへ~My Godness完結編
第3章 ♣海ほたる舞う夜♣
自分はまだしも妻に裏切られたわけではない。だが、眞矢歌は信じていた男に裏切られ棄てられ、更に子どもまで失った。
同時に恋人と子どもを失ったのは同じでも、その意味は全く違う。少なくとも、眞矢歌はその心の痛手を克服し、立ち上がった。自分などの味わった痛みよりよほど重いものを抱えて生きてきた彼女の方が強いのは判っていた。
だが、それは眞矢歌の気持ちを考えれば、幾ら何でも口にできるものではなかった。
「こんな話をしたら、眞矢歌さんにとことん嫌われてしまうのは判ってるんだけどね」
悠理は少し眼を眇めて、前方を見る。
白い蝶がひらひらと舞うように二人の前を通り過ぎていった。その蝶のゆくえを眼で辿りながら、彼は淡々と言った。
「俺の二人めの子どもを生んだのは、嫁さんを撥ねた車に乗っていた女性なんだ」
眞矢歌が訝しげに眼を細め、しばらくして頷いた。
「事故のこととか色々と話している中に、恋愛関係になったとか?」
まあ、ドラマでもよくある話ではある。事故を起こした加害者と被害者の恋人、或いは配偶者との予期せぬ恋愛。
だが、悠理と実里の関係はそんな生半なものではなかった。
悠理はゆっくりと首を巡らせた。
「そうならまだ救われたんだけどね、実はそうじゃない」
「悠理さんの話が少し判らないんだけど」
眞矢歌が理解できないのも無理はない。恐らく、これを打ち明ければ、眞矢歌はもう自分を軽蔑し、二度と近づこうとはしないだろう。それでも、悠理はどうしてか、この女性に真実を打ち明けたくてならなかった。
白い小さな蝶はやがて高く舞い上がり、天の高みへと吸い込まれるように消えていった。
蒼い夏の空に積乱雲が幾重にも重なって浮かんでいる。白い蝶は雲に吸い込まれたようにも見えた。
「さっきも言っただろ。妻や子どもを失った頃、俺は物凄く荒んだ生活を送っていたんだ。もう自棄になって、何がどうなっても良いやって捨て鉢な気持ちで毎日を過ごしてた」
同時に恋人と子どもを失ったのは同じでも、その意味は全く違う。少なくとも、眞矢歌はその心の痛手を克服し、立ち上がった。自分などの味わった痛みよりよほど重いものを抱えて生きてきた彼女の方が強いのは判っていた。
だが、それは眞矢歌の気持ちを考えれば、幾ら何でも口にできるものではなかった。
「こんな話をしたら、眞矢歌さんにとことん嫌われてしまうのは判ってるんだけどね」
悠理は少し眼を眇めて、前方を見る。
白い蝶がひらひらと舞うように二人の前を通り過ぎていった。その蝶のゆくえを眼で辿りながら、彼は淡々と言った。
「俺の二人めの子どもを生んだのは、嫁さんを撥ねた車に乗っていた女性なんだ」
眞矢歌が訝しげに眼を細め、しばらくして頷いた。
「事故のこととか色々と話している中に、恋愛関係になったとか?」
まあ、ドラマでもよくある話ではある。事故を起こした加害者と被害者の恋人、或いは配偶者との予期せぬ恋愛。
だが、悠理と実里の関係はそんな生半なものではなかった。
悠理はゆっくりと首を巡らせた。
「そうならまだ救われたんだけどね、実はそうじゃない」
「悠理さんの話が少し判らないんだけど」
眞矢歌が理解できないのも無理はない。恐らく、これを打ち明ければ、眞矢歌はもう自分を軽蔑し、二度と近づこうとはしないだろう。それでも、悠理はどうしてか、この女性に真実を打ち明けたくてならなかった。
白い小さな蝶はやがて高く舞い上がり、天の高みへと吸い込まれるように消えていった。
蒼い夏の空に積乱雲が幾重にも重なって浮かんでいる。白い蝶は雲に吸い込まれたようにも見えた。
「さっきも言っただろ。妻や子どもを失った頃、俺は物凄く荒んだ生活を送っていたんだ。もう自棄になって、何がどうなっても良いやって捨て鉢な気持ちで毎日を過ごしてた」
