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喪失、そして再生~どこか遠くへ~My Godness完結編

第4章 ♣永遠の女神♣

 その時、悠理の中をたとえようのない哀しみが駆け抜けた。彼は胸が引き絞られるような痛みに懸命に耐えた。
 あんなに子どもが好きなのに、眞矢歌は一生涯、子どもを持てないのだ。
 海神の祭の日、眞矢歌と浜辺でめぐり逢った。あのときも漠然とは感じたことだけれど、何故、自分が眞矢歌に惹かれたのか、今なら悠理は、はっきりと判った。眞矢歌の中の孤独と悠理自身の抱える孤独は全く同じ質のものだった。そんなのは互いの傷をなめ合う関係といわれてしまうかもしれない。
 しかし、言いたい者には言わせておけば良い。初めて競り市場に行く途中で眞矢歌に逢った時、何故、あんなにも心が震え、彼女から眼が離せなくなったのか。もちろん彼女の美しさそのものにも魅せられたのは間違いないが、それ以上に、二人の中の孤独な魂が呼び合ったのだともいえる。
 同じ孤独を抱える者同士が運命に導かれるようにして出逢い、恋に落ちた。
 ほどなく、眞矢歌が駆けてきた。
「悠理さん」
「オッス。お疲れ」
 悠理は片手を上げた。
「いつからここに?」
「うーん、三十分ほど前かな」
「そんなに前から? 声をかけてくれたら良かったのに」
「いや、保母さんしてる眞矢歌さんを見るのも悪くはなかったしね」
「いやだわ。ずっと見られてたなんて、ちっとも知らないで。恥ずかしい」
 少女のように頬を染める眞矢歌を可愛いと思う。
「もう仕事は終わり?」
「ええ、後は事務室に荷物を取りにいけば、すぐに帰れるわ」
「じゃあ、このまま待ってるから、俺」
「そう?」
 眞矢歌はまた走って、園舎の方に戻っていった。

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