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喪失、そして再生~どこか遠くへ~My Godness完結編

第4章 ♣永遠の女神♣

 五分後、眞矢歌がまた息を切らせて戻ってくる。
「そんなに急がなくても良いのに」
 悠理が笑うと、眞矢歌は微笑む。
「悠理さんと早く帰りたいから」
 その科白に、悠理は噎せた。
「おいおい、そういう可愛すぎる言葉は反則だぞ。そんなことを言われたら、抱きしめたくなるじゃないか。俺が狼になって食べられても良いのか~」
 悠理がわざとおどけて噛みつく真似をすると、眞矢歌は声を上げて笑った。
「いやあね、悠理さんったら。私は悠理さんを信じてるから、大丈夫」
「そんなことを言って良いのかな? 俺だって男だからね、いつ狼に変身するか判らないよ? 何なら、今晩辺り、試してみる?」
「なっ、冗談でからかうのも良い加減にしてよね」
 眞矢歌は頬を染めて、身も世もない心地である。
「ねえ、早く式を挙げようよ。俺、早く眞矢歌さんを抱きたい」
「ゆ、悠理さんっ。一体、何てことを言うの!」
 眞矢歌はますます紅くなる。
「だって、俺、知ってるんだもの」
「えっ、な、何を?」
 秘密の悪戯を見つけられた子どものように、眞矢歌が焦りを見せる。
「ほら、いつか産婦人科の前で俺を抱きしめて慰めてくれたでしょ。あの時、眞矢歌さんの胸が結構でっかいのに気づいちゃったんだ。だからー、早く式挙げて正式な夫婦になって、あの大きな胸に顔埋めて―」
「悠理さん!」
 眞矢歌が叫ぶのと、パッチーンと悠理の頬が鳴るのはほぼ同時であった。
「い、痛ぇ。また、殴ったな、この暴力女」
「だって。悠理さんが悪いのよ。そんな意地悪なことばかり言うから」
 眞矢歌はうっすらと涙ぐんでいる。流石に悠理も慌てた。

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