雪月花
第6章 佐野美紀
それが今の状況だ。
俺がもう一度同じことを言うと佐野はその黒い何かを隠すように俯いた。
だから今、どんな表情かは分からない。
そのまましばらく、お互いに何も言わなかった。
静かなこの空気に流れる、校舎からの生徒達のざわめき。
楽しそうな声がここまで届いている。
それが時間を長く感じさせた。
…これで諦めてくれたのか?
あれだけメールして来て、流石にそんな訳はないか…
と思っていると、俯いたまま佐野が小さく、でもしっかりと呟いた。
「流星…理由は?」
「…理由も何も、俺はもうお前と元の関係に戻る気はない。元々、好きな訳じゃないし。男が欲しいなら他を当たってくれ」