雪月花
第6章 佐野美紀
叫びながら近寄ってくる佐野。
もうそこには、さっきまでの作られた可憐な女子はいなかった。
怒りを、自分を、黒い何かを露にした女子だ。
あぁ…これがこいつの本性か。
全くもって嬉しくはないけど、ようやく本当の佐野が見れた気がした。
「お前のそういう所が嫌になるんだよ」
「なっ―…」
近寄ってきていた歩みが止まる。
その距離、約1m。
心の距離はもっと、ずっと遠い。
「自分が1番綺麗って思ってるそういう所が嫌なんだ」
俺は佐野を冷たく見下す様に、鋭く言った。
本性を見ても嫌なのには変わりがない。