南の龍
第10章 缶けり
「帰ったとかだったらあいつらマジでぶっ飛ばす」
「こえぇよ」
「やっぱ私も帰ろうかな……」
「『も』って輝さんとかまだ帰ったって決まったわけじゃないだろ」
「ぶっっ!輝さんって!輝はさんってよりちゃんだろ!マジうける」
「輝ちゃん……なんかしっくりくる」
「だろ?」
私と木下は缶けりのことなんてすっかり忘れて爆笑中。
「あの、輝の美貌半分分けて欲しい!」
「俺は刻さんの強さを分けて欲しい!」
「刻は『さん』というより“様”だろ」
「なくはない」
「刻様……やべ、腹割れそ」
「なんだそれ」
「腹筋…が」
「そんなんで割れたら苦労しねぇよ」
「いや…マジで。笑い死にするかも!」
「それで死ねたら幸せ物」
私たちは笑うことに真剣になりすぎて目の前に立ってる輝に気づかなかった。