南の龍
第4章 南龍
「それにしてもホント珍しい人が来たね」
「……」
「なにがいい?」
「……なにがいい」
「え?」
「なにが人気なんだ」
「うーん。苺ジャムパンとか」
「甘いのは無理だ」
「じゃぁ、焼きそばパンは?」
「炭水化物の組み合わせも無理だ」
「じゃぁ、ピザパン?」
「チーズも無理だ」
「ん〜、じゃぁメロンパンとか?……でも甘いか」
「いや、それでいい」
……嫌いなもの多いな。
「気に入って貰えるのがあって良かった」
「……」
「飲み物は?」
「グレープはあるか?」
「えぇ、あるわよ」
「……」
「それだけでいい?」
「あぁ」
「じゃぁ、二つで230円ね」
「それにしても美椰ちゃんみたいなこと言うのね」
「……」
刻はお金を払ってこっちに振り向いた。
そして、私の方に向かってきて、さっき買ったばかりのパンとジュースを差し出した。
……そーいえば私もあんなこと言ってた気がする。