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RAIN

第6章 拒絶《拓海side》

俺の隣で笑顔を向ける少年の真意が掴めず、俺はどう接していいか戸惑いを隠せない。
どうして俺に優しくするのだろうか? どうして俺の傍にいるのだろうか?

俺は他人の善意に不慣れだった。だって俺は疎まれる存在だから。それは過去も現在も、そしてこの先未来も変わらないだろう。

それでいい。俺は嫌われて当然の人間なんだ。
だから常に孤独と背中合わせ。それは自ら望んだことだ。


なのに今、一つの傘を共有し、肩を並べて一緒に歩く少年の存在に、俺は内心どうしたものかと思案する。

本当は借りた傘を彼に渡して、それで終わるはずだった。何事もなく、お互いに違う毎日を送る。また赤の他人として、日を追うごとにお互いの存在は頭の中から抜け落ちて、当たり前の日常を送る。

しかし雨が事態を急変させた。突如降り出した雨によって、俺の計画は変更せざるを得ない。



俺のアパートに到着して、本当は今度こそここで別れる予定だった。
けれど横に並ぶ神崎くんの姿を見て、このまま帰らせるには忍びない状況になっていたことにはたと気付かせる。
急に降られた雨にかなりの水量を吸収しただろう制服と、雨の湿気を帯びた髪の毛を見て、彼をそのままにしてはいけないという判断に持っていかせる。

だから俺は慎重に言葉を選ぶ。
「もしこれから予定がないのなら……、よかったらお茶でもどうかな?」

たったそれだけの科白に、どれだけの勇気が俺の中に必要なのか?

拒絶される。何よりも神崎くんの反応が怖い。
ちらりと神崎くんを観察する。

高校生ならでの、外見的にも内面的にも未熟な、大人と子供の両方を持ち合わせた複雑な年頃。
神崎くんも例外ではなく、特に彼はあどけない顔立ちをしていた。大きな、光の加減で藍色にも見える黒い瞳。きりっと引き結んだ、意思の強そうな唇は俺の拙い誘いにどう返すのだろうか?
彼からの返事を落ち着かない心境で待つ。



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