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RAIN

第7章 諦められない想い《翔side》

だけど俺の複雑な心境を知らないお袋は、俺の体調を純粋に心配し、ただ俺へとまっすぐ見つめる。
しかし諦めたのか、お袋はふぅーっと軽いため息をつき、食器棚の引き出しの中から一つの市販薬を出した。
「ご飯を食べ終わったら、念のため風邪薬飲みなさい」
それ以上は何も口にせず、再び家事に戻る。

我が家の母上殿は俺たち姉弟のよき理解者だ。よく周囲の奴等がいうような、ヒステリックで頭ごなしにガミガミ言うといったことはない。だから気楽だ。


食欲がないから、味噌汁を胃に流し込み、ついでに市販薬を無理に飲み込んでから学校に向かう。





****


「なんか調子悪そうじゃない?」
足取り重い中、やっとのことで教室に到着して自分の席に座った途端、ほとんど日課のようになっている朝の美樹からの一言。今朝は俺の体調を気にしての発言から始まった。
「……別に……」
体調不良による絶不調なんだから言葉を交わすのも億劫だ。察してほしい。
しかしお節介である美樹にそれを訴えたところで通用しないのは、長年による付き合いで嫌というほど身に沁みている。
「……無理しちゃだめよ」
だが美樹は珍しく声をあげることもせず、暫くじっと俺を直視したかと思うとすぐに引き下がって行った。
そんなに今の俺は辛そうにしてるのだろうか?



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