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RAIN

第7章 諦められない想い《翔side》

何も返事しない俺にさすがの駿平も勘付いたようで、今までの憎らしいニヤニヤした笑みは消えた。
「……まさか振られたのか?」
さらに声を潜める辺り、駿平なりに気を使っているようだ。
「…………だったらどうだよ!」
やや乱暴な口調になっても仕方が無いと思う。

駿平にしてみれば意外な展開だったようで、口をあんぐりとだらしなくあけたままだった。
半分放心状態にある駿平に俺は余計にムカつき、駿平から顔を背けた。
「……マジかよ……」
そんなみじめな嘘つく必要がどこにある?

「なんでまたそんなことになったんだよ?」
再び無言を貫いていれば、駿平は信じられないと顔を顰めながら、そうなった過程を聞きたがる。
しかしどうして自分の失態をこいつに話さなくちゃいけない? 悪友だろうが幼馴染みだろうが、それを告白する必要はこれっぽっちもない。

俺がずっと黙秘していると、駿平もこれ以上情報を得ることは不可能だと悟ったらしく、はぁーっと大仰な深い息を洩らした。
「……そこに至った経緯は聞かないが、お前それでいいのかよ?」
「それでいいのかってどういう意味だよ?」
「だから諦めちまうのかってことだよ」
駿平の言わんとしている意味をやっと理解した俺は、いらぬお節介を発揮するこいつをきつく睨みつける。
「何を言われたのかわかんねえけど、ちょっと言われたぐらいですぐに諦めるほど、お前のその人への想いってそんな程度だったのかよ」
言葉に含まれている駿平の口調に、俺はギリリと悔しさから歯軋りしてしまう。

「……お前なんかにわかる訳ないっ……」
そうだ、こいつに分かるはずがないんだ。俺がどれだけあの人に会いたいと焦がれ、そして会えた時の嬉しさと、同時に再認識した恋慕。俺は間違いなくあの人が、拓海さんが好きだと自覚した。他の誰よりも、拓海さんを愛してる。それは絶対に間違いのない絶対なる想い。

だけど拓海さんからはっきりと拒まれたら、嫌でも諦めるしかないじゃないか。





「嗚呼、わからないね。……でもお前がそれでいいなら、お前のその人への想いなんて所詮大したことなかったんだなってことは理解したよ」

どうしてこいつにそこまで言われなくちゃいけないんだ。








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