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RAIN

第7章 諦められない想い《翔side》

勝手に決め込む駿平に、怒気が膨らんでくる。
俺の拓海さんへの想いを簡単に済ませないでほしい。大体こいつは何もわかっちゃいないくせに、何一つ理解なんてしてないくせに、何を知ったかぶりしてるんだ。
なによりも一方的に決め付けて、俺に弁解の余地を与えないこの悪友に鉄拳を喰らわせたい。


今も駿平は言い足りないらしく、自分の要件を優先している。
「俺はお前がはじめて他人に執着したことにひどく感動したんだ。だからお前の初恋を見届けようと思ったのに……」
まるで保護者的な発言をするこいつの心理が俺には理解を示せるものではない。というかだ、俺たち以外にも人がいる。いくら声を潜めてるとはいえ、誰に聞かれるかわからないこの状況で、あからさまに俺の恋路の話題をするのはやめてほしい。
「……ちょっと出ようぜ」
これ以上ここで話されては俺が居づらくなる。
しかしこいつが終わらせるとは思えない。また俺も言われ続けるつもりもない。言いたいことは山積みだ。

本当は体を動かすのも億劫だが、ここで無意味な口論を続けるよりはマシだ。何とか怠い体を鞭打って立ち上がり、廊下へと足を進ませた。それに駿平は素直に従う。





屋上に繋がる小さなフロアに俺たち二人、互いに向き合う。普段なら屋上は生徒たちのちょっとした憩いの場所の一つでもあったが、生憎今は小雨が降り出しており、屋上に出ることはできないため、利用しているものは俺たち以外誰もいなかった。だからこそこのフロアを選んだ。ここならば誰にも聞かれることはない。

それは駿平も同様だった。といっても駿平は俺ほど意識はしてなかったようだが。でなければあの教室内で、いくら声を潜めてたとはいえ、堂々とあんな話題に触れたりなんかしない。所詮は他人事程度の感覚でしかない。

対峙するように向かい合い、先に触れたのは駿平だった。
「俺はさ、さっきも言ったように感動したんだよ。翔を変えたその人に尊敬すら感じた。だってそうだろ? お前は今まで他人に心を開かなかったんだぜ。俺たちにですら距離を置いてた。それを簡単にその人は翔の心を開かせちまったんだ」
そこに駿平の複雑な心理が込められていたのか……。



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