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RAIN

第8章 告白《翔side》

ドア一枚隔てて拓海さんがいる。だけどあまりにも俺たちの距離が遠く感じる。それでも俺は前に進まなくちゃいけない。

「俺……、話があって来ました」
勇気を総動員してドアの向こう側に様子を伺っているであろう拓海さんへと声を掛ける。
しばらくの沈黙の後、拓海さんから出た返事は、俺がよしとしないものであり、けれど同時に想像もしてたものだった。
「……俺にはない。悪いけど帰ってくれないか?」
その返事に俺は胸が痛む。
だけど引き下がる訳にはいかない。

俺は拳をギュッと握り、尚も食い下がる。
「お願いします! どうしても伝えたいことがあるんです」
悲痛な思いで訴える。
「開けてくれるまで俺、ずっとここにいますからっ!」
拓海さんが聞き入れてくれるまで絶対にここから離れない。長期戦になっても、絶対に引き下がらない。


それからずっと沈黙が続いた。だんだんと再び頭痛が押し寄せてくる。いくら今は雨が降ってないとはいえ、本調子でない俺の身体は寒気を覚え、ブルリと震える。
きっと今もドアを隔てた先に拓海さんが立ち尽くしている。そんな気がして、俺はひたすらこのドアが開くのを待ち続けた。



何分経ったろうか。多分そんなに経過してないだろうが、身体が寒気を通り越して熱く感じ始めた頃、異変は起きた。

がチャッと音が鳴り、同時にドアノブが回ったのを目が拾った。
そしてドアが少しだけ開き、中からもう一度会いたいと懇願していたその人が思いつめたような面持ちで俺を見つめていた。

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