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RAIN

第8章 告白《翔side》

熱が高かったらしい。そりゃあ身体がだるいはずだわ。なんかどうでもいい感想が浮かぶ。

だけど拓海さんは俺とは違って、動きが活発になる。
「とりあえず布団敷くから、そこで横になって」
「……え?」
急な展開に俺はついていけなかった。
「安静にしないといけない。ついでに水枕作ってくるよ」
それだけ述べるとすぐに拓海さんは行動に移す。意外と行動派のようだ。すぐに隣の部屋に移動して、俺はというと事態についていけず、混乱から抜け出せなかった。

しばらくして拓海さんが戻ってきて俺に声をかけてきた。
「布団敷いたからすぐに横になって」
俺を心配しての好意を拒否もできないので、俺は素直に従うことにした。

案内された部屋に通される。和室のつくりをした部屋の壁際に布団が一つ敷いてあった。他にはいくつかの段ボールが重なっている。よくみれば物が少ないような気がする。質素を通り越して何もないに等しい。
もしかして引っ越してきたばかりなのか、もしくはこれから何処かに引っ越すのか……。積み重なっている段ボールがそれを物語っている。
しかしこれが後者だとすると、これは非常に困ることになる。なんせ駿平に推してもらった形とはいえ、俺はこれから拓海さんに自分の気持ちを伝えようとここまで足を運んだのだから。

「今氷枕作ってくるよ」
俺を布団に寝かせるとすぐに拓海さんは立ち上がる。
「あのっ……!」
思わず声をあげてしまう。その俺の声に拓海さんが動きを止める。
「もしかして……ここに越してきたばかりですか?」
つい聞いてしまった。
その疑問に拓海さんはすぐに納得したようで、「まあね」と一言だけ返した。

その返事に俺はほっと安心する。
よかった。拓海さんがこの地から離れることはないとわかっただけでも一安心だ。

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