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RAIN

第8章 告白《翔side》

拓海さんの手製の美味しい雑炊を完食して、俺はお茶を口にしながらのんびりしていた。

「一応熱をさます薬も飲んだ方がいいかもな」
そう言って拓海さんはキッチンの方から市販薬を取り出し、水一杯と一緒に俺の前に出してきた。
「ありがとうございます」
もうここまできたら遠慮するのも失礼だと思い、俺は素直に渡された薬を口に含んだ。


しばらくはお互いに声をかけることはなく、聞こえてくるのはテレビの笑い声だけ。何かのバラエティー番組らしいが、俺は基本テレビは見ないので、なんという番組かはさっぱりだ。

「ほんとにいろいろとありがとうございました」
笑顔で礼を述べれば、拓海さんは苦笑で首を軽く横に振る。
だけどどこか辛そうな拓海さんの表情から、俺は瞬時に拓海さんが次に何を言おうとしているのか理解してしまった。

そうだった。拓海さんの優しさに甘えて忘れていた。拓海さんは俺を避けていた事実をすっかり頭から抜けていた。

また脳裏に浮かんできた拓海さんの、最後に放った痛烈な拒絶の言葉。


「……家の近くまで送ってくよ。まだ調子よくないだろうから」
拓海さんなりに気をつかってくれている。どこまでも優しい人だ。
でも辛い、苦しい。拓海さんの口から最終的に言い放つ絶望への言葉が俺を縛り付ける。

だけど嫌だ。もう諦めたくない。もう二度と同じ過ちはおかさない。
「俺……、拓海さんに伝えたいことがあってきました」
震えそうな心を叱咤して、拓海さんをまっすぐに見つめた。

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