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RAIN

第9章 告白2《拓海side》

居た堪れない。歯がゆい感情はどこまでも消え失せることはなく、神崎くんの好意に俺は正直揺れ動いていた。

自分の意思で神崎くんを突き放そうと決意したのに、いざ彼の純粋な好意を目の当たりにするとその決心は脆く決壊する。なんて優柔不断な、愚かな人間なのだろうと自分自身情けなくなってくる。


本当は彼を傷つけたくない。彼と一緒にいたい。他愛ない友情を分かち合いたい。
神崎くんは純真な心の持ち主だ。心から俺を慕ってくれている。

けれど突き放さなくてはいけない。もう二度と冒してはならない。俺の中に浮かび上がる二人の大切な存在。大好きだった美しい女性と、そしてかけがえのない大切な親友の姿。

だからあえて俺は神崎くんを突き放した。言葉で傷付けて、行動で拒否した。神崎くんの傷付いた表情に、俺は酷く自分を責めた。
だけどこれでよかったと何度も自分に言い聞かせた。これで神崎くんが不幸な目にあうことはない。彼には光の世界がある。家族があり、友人もいる。彼に相応しい場所がちゃんとある。


なのに神崎くんはまた俺の元にきた。どんなに冷たく突き放しても、神崎くんは俺に会いにきてくれた。体調が悪い中、俺にもう一度会いたいと、わざわざ来てくれた。
そんな病人の彼を俺は放っておけなかった。


だけど彼の真意が正直わからない。どうして風邪で辛い身体をおしてまで俺に会いにきたのか。神崎くんを冷たくした人間にわざわざ会いたいと望む彼の真意が俺には難解だった。

そして今、彼は俺に謝罪をしている。彼は何も悪くない。いや、悪いのはこの俺の方だ。わざと彼に冷たい言葉で傷付けたというのに、神崎くんは声を張り詰めて俺に謝罪をいれている。


どうしてそんなにしてまで俺と一緒にいたいと望むのか……。

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