テキストサイズ

RAIN

第9章 告白2《拓海side》

切羽詰まったような、切実な顔で俺を見ないでくれ。
神崎くんは何も悪くないんだ。


「違う……、違うんだ……」
つい出てしまった本心。

「……え?」
神崎くんの疑問符。

「神崎くんが嫌いとかそんなんじゃない」
「それじゃ……」
更に困惑した神崎くんを前に、俺は今まで蓄積していた本心を口にしていた。


「俺と一緒にいると君が不幸になってしまう。だから俺と関わっちゃいけない」
俺が口にした内容は神崎くんをひどく動揺させている。
そんな神崎くんに、俺は見ないようにと強く瞳を閉じる。
「俺は周りを不幸にさせる。君には君のいるべき場所がある。俺と一緒にいる必要はないんだ」
どうかわかってほしい。そう思う心と、それとは違う相反する自分勝手な心理がひどくせめぎ合う。



沈黙が空間を支配する。
神崎くんの動揺は相当なものだろう。そしてひどく混乱している。
だけどそれもすぐ終わるだろう。神崎くんの中で答えは出てきている。そしてそれは今までの思考とは正反対のもの。今度彼の口から出る言葉は、俺を否定する言葉だ。

……それでいい。それが一番いい方法だ。




「俺……、それでも拓海さんと一緒にいたいんです」

だけど神崎くんから出た言葉は、俺が想像したものとは反対のものだった。
「だって俺、拓海さんが好きだから」
思わず信じられないものを見るような感覚で、神崎くんを見つめてしまう。

彼はちゃんとわかっているのだろうか? 俺の言葉を、意味をちゃんと聞いていたのだろうか?

つい声を張り上げようとした俺に気づいたのか、神崎くんが先に口を開く。
「拓海さんは一緒にいると俺が不幸になると言ったけど、そんなのは関係ないんです。だって俺が不幸になるかどうかなんて、それは俺が決めることだから。それに俺は不幸にならないです」
そう言いながら神崎くんが優しく微笑んだ。
まるで慈しむように、包むような声音と眼差しで俺を見つめていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ