わたしの弟
第3章 しるし
「や、っ…酒谷くん!」
わたしの声に彼はハッとするがすぐに申し訳なさそうに眉毛を下げた。
「ごめん。ホントは何もしないつもりだったんだ。…だけど、加山さんとあんな格好してたら、理性持たなくて」
あんな格好、と聞いてドキッとする。
わたしは相変わらず、彼の膝の上をまたがっていて、そのまま抱きしめあってる格好。
酒谷くんの手は止まったけど、まだわたしの太ももに触れている。そのまま時が止まってるかのように。
ただ、言葉を交わしているだけ。
「り、理性って…」
相手の言葉に赤くなり、相手の胸元で顔を隠す。
「俺、本気なんだ。ヤりたくて、付き合って、なんて言ったわけじゃないよ。」
こんな言葉は、誰にも言われたことがなく、正直言うと嬉しかったりもする。
彼が手を腰に戻し、ギュッと力を入れて抱きしめる。
「俺のこと、嫌い?」
フルフルと首を振る。
前々から、優しいな、とか思ったことあったし。いい人。
嫌いってわけじゃないけど…翔が、居るから…。
でも、諦めるって、忘れるって、決めたんだ。
「わたし…酒谷くんなら、いいよ」
「え?」
「酒谷くんとなら、エッチなこと…出来るよ」
初めて、わたしから抱きしめる手に力をいれた。
彼のこと受け入れるって、決めた。
嫌いじゃない。
きっと好きになれる。
だから…。
わたしの言葉を聞いた瞬間、彼がわたしを押し倒した。