
わたしの弟
第3章 しるし
「しょ、翔?いる?」
トントンとドアを軽く叩き中に入る。
あれ、暗い…
でも、靴あったし。
寝てるのかな。寝息聞こえるし…
今まで通り、今まで…
そう頭で繰り返しながら、部屋の電気をつける。
案の定、ベッドには、翔が寝ていた。
ん?
妙に息荒くない?
それに所々あかい。
近づいて、額にてをあてる。
「あつっ!熱?!」
異常な暑さに目を見開く。
「翔っ?」
とりあえず名前を呼ぶ。
「ん…、っ…あね、き?」
声が聞けて一安心する。
「よかった…、あ、お姉ちゃん、薬持ってくるから!」
ホッと息を吐けば、慌てて薬箱を取りに行く。
1番効き目がありそうな薬とお水、あと、水枕、濡れタオルを持って行く。
「翔、大丈夫?」
「……ん」
近づいて、翔の頭を抱きしめるようにゆっくり持ち上げる、翔の顔が胸に当たって鼓動が高くなるが、
わたしはお姉ちゃん、と言い聞かせて気をまぎらす。
水枕を置いて、頭をゆっくり戻す。
濡れタオルを額に乗せて、「大丈夫?」と話しかける。
「ん…、あねき、の、おっぱい、…あったかい」
お、おっぱいって!!
熱があるから、妙に甘えちゃうだけよね。
「ほら、薬飲んで」
「のめ、ない…口移し」
こ、こいつは!
せっかく諦めようって思ってるのに!
なんで、そうやって…
高鳴る胸を抑えて息をする。
口移しっていうわけは、き、キスするってことでしょうっ?
諦めようって決めた相手にできるわけないじゃない!
「……はやく」
だけど、今日の翔は弱々しい。
起き上がることも出来なさそうだった。
…弟、として…
それなら、許してくれるかな。
