麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】
第3章 孤独な貴公子
「だが、口づけまでは必要なかったろう。お前が嫌なら、嫌だとはっきり言えば良かった。想いを打ち明けられたとしても、きっぱりと断れば済む話だ」
「もしかしたら、嫌だって言えなかったかもしれない」
「おい、浄蓮! 何を考えている。馬鹿なことを言ってるんじゃないぞ」
浄蓮が叫ぶように言った。
「だから、俺は兄貴に口づけたんだよ! あの人に想いを打ち明けられたら、俺自身、ちゃんと断れるかどうか自信がなかったから、あんなことをしたんだ!」
「まさか―、あの男に惚れたのか?」
秀龍が愕然と呟く。
気詰まりな沈黙が二人の上に重くのしかかった。
「判らない。そんなこと、判るわけないじゃないか。俺も男で、向こうもれっきとした男だよ? ただ、あの人にもう二度と逢えないと思うと、自分でもどうしようもないくらい哀しくて淋しくて、涙が出てくるんだ」
ひっそりと涙を零す浄蓮を見、秀龍は溜息をついた。
「今日、お前は心ここにあらずで稽古に集中できなかったと言っていたな? あれは、あの男のことを考えていたからということだったんだな」
秀龍は小さく首を振った。
「悪いことは言わない。今更、私が言わずともお前も十分判っているだろうが、男を相手に恋に落ちても、何も生まれるものはない。私はそなたがみすみす不幸になるのを見てはいられないんだ。浄蓮、眼を覚ましてくれ」
と、ひそやかな沈黙を浄蓮の明るすぎる笑い声が破った。
「馬鹿だな、どうして男の俺が同じ男に惚れるんだよ。幾ら女の格好が好きでも、そっち方面の嗜好は極めて正常だよ、俺。兄貴とは違うんだからね」
いきなり、しんみりとした雰囲気から、いつものお気楽ぶりを発揮し始めた義弟に、秀龍が眼を見開く。
「もしかしたら、嫌だって言えなかったかもしれない」
「おい、浄蓮! 何を考えている。馬鹿なことを言ってるんじゃないぞ」
浄蓮が叫ぶように言った。
「だから、俺は兄貴に口づけたんだよ! あの人に想いを打ち明けられたら、俺自身、ちゃんと断れるかどうか自信がなかったから、あんなことをしたんだ!」
「まさか―、あの男に惚れたのか?」
秀龍が愕然と呟く。
気詰まりな沈黙が二人の上に重くのしかかった。
「判らない。そんなこと、判るわけないじゃないか。俺も男で、向こうもれっきとした男だよ? ただ、あの人にもう二度と逢えないと思うと、自分でもどうしようもないくらい哀しくて淋しくて、涙が出てくるんだ」
ひっそりと涙を零す浄蓮を見、秀龍は溜息をついた。
「今日、お前は心ここにあらずで稽古に集中できなかったと言っていたな? あれは、あの男のことを考えていたからということだったんだな」
秀龍は小さく首を振った。
「悪いことは言わない。今更、私が言わずともお前も十分判っているだろうが、男を相手に恋に落ちても、何も生まれるものはない。私はそなたがみすみす不幸になるのを見てはいられないんだ。浄蓮、眼を覚ましてくれ」
と、ひそやかな沈黙を浄蓮の明るすぎる笑い声が破った。
「馬鹿だな、どうして男の俺が同じ男に惚れるんだよ。幾ら女の格好が好きでも、そっち方面の嗜好は極めて正常だよ、俺。兄貴とは違うんだからね」
いきなり、しんみりとした雰囲気から、いつものお気楽ぶりを発揮し始めた義弟に、秀龍が眼を見開く。