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第17章 変調

「熱は、ないみたいだね」


 再びベッドの傍へやってきた三ヶ島は、体温計を受け取って確認するように頷いた。

 
「昨日はよく眠れたかい?」
「あまり、眠れませんでした」


 というより自分が眠ったという記憶さえなかったが、これ以上言及されるのも嫌で理由は寝不足ということにした。

 すると三ヶ島もそれに納得したのか「じゃあ、一時間寝て様子を見ようか」と言って、悠理に背を向ける。

 その何でもない対応へ安堵の息をついた悠理だったが、その直後に「ああ、八桐さん」と思い出したように三ヶ島が振り返った。


「ちゃんと寝るように」


 腰のあたりを指さした後、三ヶ島は少しいじわる気な顔で唇へ人差し指を当てた。

 その仕草に、悠理は携帯を忍ばせていることがばれていることに気が付いて咄嗟に「すみません」と目を伏せる。

 対する三ヶ島は手をひらひらと振って、カーテンの向こう側へと歩いて行った。

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