少女おなにー
第2章 ピンクのキャンディー
「今日のキャンディーはピンク色~♪」
休日にはそれなりに賑わうこの公園も、月曜の正午付近には人っこ一人いなくなる。
こんな時間に水色のワンピースを風にひらめかせながら、変な歌を歌って散歩道を歩く(認めたくはないが)実年齢より5歳ほど若い中学生くらいに見える女性を誰かが見たら、相当に怪しむにちがいない。
でも、大丈夫。今、辺りを見回したところ誰もいないし、そもそも私は本当は去年高校を卒業したばかりの浪人生で、今日はなんか気分がのらなくて授業をサボっているだけだから。
「今日のキャンディーはピンク色~♪」
じとっと汗ばみ、ワンピースの中の湿度が上昇してくるのがわかる。襟元からは、自分の体臭が漂ってくる。
こんな事を言ったら変態と思われるかもしれないけど、私は自分の体臭が結構すきだ。少し酸味のあるミルクのような体臭を嗅ぐたび、恍惚とした気分になる。
「今日のキャンディーはピンク色~♪」
歌っている間に目的地に到達した。一般人は、余程の緊急事態でないかぎり、極力使用したくないコンクリートづくりの施設。
私の体はふらふらと、公衆トイレの中に吸い込まれていった。
むわっと漂うアンモニア臭を嗅ぎながら、3つあるなかで一番手前の個室に入った。
この個室は、障害者や小さな子供をもつ母親のために、だいぶ広い空間を確保している。おそまつながら、子供におむつを着せるためのベッドもある。私は壁にもたれながら広い床に腰をおろした。
聞こえるのは、私の息遣いと、隣の男子トイレから聞こえる、小便用便器を洗い流す音、遠くからは、少し気の早い蝉の鳴き声も聞こえる。とりあえず、人の気配はない。
予備校では今頃昼休みが終わって、授業が始まる時間帯だ。
「今日の化学の予習、大変だったよ~」などと、口々に言いながら席に着く、まだ名前もよく覚えていない(というか、覚えるつもりもあまりない)クラスメートたちの表情が目に浮かぶ。数人の中の良いクラスメートは、「詩織、今日、具合わるいのかな?」、「でも、あの子、時々休むじゃん。」などと話しているのかもしれない。
休日にはそれなりに賑わうこの公園も、月曜の正午付近には人っこ一人いなくなる。
こんな時間に水色のワンピースを風にひらめかせながら、変な歌を歌って散歩道を歩く(認めたくはないが)実年齢より5歳ほど若い中学生くらいに見える女性を誰かが見たら、相当に怪しむにちがいない。
でも、大丈夫。今、辺りを見回したところ誰もいないし、そもそも私は本当は去年高校を卒業したばかりの浪人生で、今日はなんか気分がのらなくて授業をサボっているだけだから。
「今日のキャンディーはピンク色~♪」
じとっと汗ばみ、ワンピースの中の湿度が上昇してくるのがわかる。襟元からは、自分の体臭が漂ってくる。
こんな事を言ったら変態と思われるかもしれないけど、私は自分の体臭が結構すきだ。少し酸味のあるミルクのような体臭を嗅ぐたび、恍惚とした気分になる。
「今日のキャンディーはピンク色~♪」
歌っている間に目的地に到達した。一般人は、余程の緊急事態でないかぎり、極力使用したくないコンクリートづくりの施設。
私の体はふらふらと、公衆トイレの中に吸い込まれていった。
むわっと漂うアンモニア臭を嗅ぎながら、3つあるなかで一番手前の個室に入った。
この個室は、障害者や小さな子供をもつ母親のために、だいぶ広い空間を確保している。おそまつながら、子供におむつを着せるためのベッドもある。私は壁にもたれながら広い床に腰をおろした。
聞こえるのは、私の息遣いと、隣の男子トイレから聞こえる、小便用便器を洗い流す音、遠くからは、少し気の早い蝉の鳴き声も聞こえる。とりあえず、人の気配はない。
予備校では今頃昼休みが終わって、授業が始まる時間帯だ。
「今日の化学の予習、大変だったよ~」などと、口々に言いながら席に着く、まだ名前もよく覚えていない(というか、覚えるつもりもあまりない)クラスメートたちの表情が目に浮かぶ。数人の中の良いクラスメートは、「詩織、今日、具合わるいのかな?」、「でも、あの子、時々休むじゃん。」などと話しているのかもしれない。