テキストサイズ

一万回目のプロポーズ

第2章 8年の溝





外でサッカーでもしていたんだろうか



俊司の体からは、どこか土臭いような日なた臭いような匂いがした




「笹川さん」




『…何?』




あたし、どんだけ不機嫌な顔してたんだろうね


あたしが振り向くと、俊司は少し引いたような顔をした





「数学の宿題、やった?」




『…はい』




舌打ちするかまともに返事するか迷ったけど…

無愛想すぎってのもどうかと思って
ちゃんと"はい"と言って宿題を見せてやった





「さすが笹川さんっ、ありがとなぁ」





あたしが今眠いのは

その宿題を昨夜コツコツとやっていたからだ



そんなあたしの努力の結晶が、簡単に書き写されていくのを見るのは…


腹が立つ






いや、まぁいいか…



あたしは、どうせあんたは宿題してこないと思ったから頑張ったんだもんね








「笹川さん、感謝っす」




そんであたしの元へ帰ってくる宿題…




『どういたしまして』












ストーリーメニュー

TOPTOPへ