一万回目のプロポーズ
第6章 もうやめて
「は?」
俊司は顔を歪めた
見ていればわかる
"何で?"
と言っているのが…
「ぃやなの…何で明奈のことを、"明奈"って呼ぶの…?」
「千尋だって"千尋"だ」
「他の女の子は名前で呼ばないでしょ…?」
俊司は困ったように顔を掻いた
「見てたんだよ…?
屋上で、明奈と一緒にいるの…」
千尋の目には、溢れんばかりの涙が溜まっていた
「あれはー…」
「明奈を…押し倒したよね…」
とうとう涙は、頬を伝う
「プロレスごっこだから…」
「俊司…!!」
千尋は、自分の顔を手で覆った
その肩は小刻みに震える
「俊司はあたしのこと…嫌いなんだぁ…」
声は裏返り、足元から崩れてしまいそうなくらい
千尋は泣き出した
「…ごめん」
俊司は千尋の腕に手を置き、優しくさすった