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妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】

第4章 第二部・生

       生

 あの男(ひと)を王が小突いて膝立ちにさせ、その髪を掴むと、顔を地面に押しつけた。あの男の見慣れた優しい瞳が見えなくなった。
 王が容赦なくあの男の貌を固い地面に押しつけたからだ。
 私の胸が苦痛と後悔と否定の気持ちで痛む。
 私のせいで、あの男が死んでしまう。
 お願い、私の大切な男を奪わないで。
 やっとめぐり逢えたひとだったのに。
 王が剣をあの男の首の上で振りかざした。
 私は深く息を吸い、大声で言った。
 〝止めて!〟
 けれど、王の動きが止まることはない。
 一面に血飛沫が飛び、あの男が倒れる。
 血が、あの男の血が溢れ、零れ落ちて地面をしとどに濡らす。
 溢れ出し、零れるおびただしい血は、あの男の生命の零れ落ちるのと同じ。
 〝返して、私のあの男を返して〟
 声を限りに叫んでも、あの男は永遠に帰ってこない。私の手の届かない遠い場所にたった一人で旅立ってしまった。
 あんな場所で、あんな死に方をして良い男ではなかったのに。
 ああ、憎い、憎くてたまらない。
 私はこの恨みを一生抱いて生きてゆくだろう。
 天地神明(テンチシンミヨン)の神にかけて、私は誓う。
 けして、許さない。
 私の大切なあの男を奪った憎い男を。
 この生命ある限り、あの男の分まで恨みを抱いて生きてゆく。

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