妖(あや)しの月に~光と闇の王~【第二部 光の王】
第4章 第二部・生
清花はハッとして目ざめた。
急いで身を褥に起こす。慌てて周囲を眺め、ここがどこなのかを確認してしまう癖はいっかな直らない。
ここに来てから、もう三年にもなるというのに、いまだにあの夜の夢を見る。あの夜の悪夢にうなされた日は、大抵、夜半に飛び起きて、こうして今、自分の居る場所がどこなのかを確かめずにはおれない。
おかしなものだと自分でも思う。
いつも見る悪夢は、けしてあの夜、起きたことそのままというわけではない。現実として、あの男が王に踏みつけにされたわけでもない。だが、清花にとっては、そんなことはどうでも良いことだった。
あの男が王の振りかざした刃によって殺されたことは紛れもない事実なのだ。それ以上の厳然とした事実があるだろうか。
夢には直接的には出てこないけれど、清花には、何故か、あの男の苦痛に歪んだ顔が見える。地面に踏みつけにされ、恨めしげな表情を浮かべているあの男が。
たとえ地面に踏みつけられはしなかったとしても、あの男は、あんな表情をしていたに違いない。苦痛と無念に歪んだ顔をしていただろう。
清花は、その貌を実際に見たわけではない。
王が刃を振りかざした次の瞬間には、あの男はもう血の海の中で絶命していた。
さぞ、無念だったに違いない。だから、清花はあの男の恨みをそのまま受け継いで、今も生きている。
暗殺者集団〝光の王〟。それが、今、清花が身を置いている場所だ。
三年前、宮殿の外に打ち捨てられた彼女を助けてくれたのは、〝光の王〟の頭領光王(カンワン)だった。正確に言うと、清花を発見したのは光王ではない。〝光の王〟の副頭領守尹(スユン)だった。
急いで身を褥に起こす。慌てて周囲を眺め、ここがどこなのかを確認してしまう癖はいっかな直らない。
ここに来てから、もう三年にもなるというのに、いまだにあの夜の夢を見る。あの夜の悪夢にうなされた日は、大抵、夜半に飛び起きて、こうして今、自分の居る場所がどこなのかを確かめずにはおれない。
おかしなものだと自分でも思う。
いつも見る悪夢は、けしてあの夜、起きたことそのままというわけではない。現実として、あの男が王に踏みつけにされたわけでもない。だが、清花にとっては、そんなことはどうでも良いことだった。
あの男が王の振りかざした刃によって殺されたことは紛れもない事実なのだ。それ以上の厳然とした事実があるだろうか。
夢には直接的には出てこないけれど、清花には、何故か、あの男の苦痛に歪んだ顔が見える。地面に踏みつけにされ、恨めしげな表情を浮かべているあの男が。
たとえ地面に踏みつけられはしなかったとしても、あの男は、あんな表情をしていたに違いない。苦痛と無念に歪んだ顔をしていただろう。
清花は、その貌を実際に見たわけではない。
王が刃を振りかざした次の瞬間には、あの男はもう血の海の中で絶命していた。
さぞ、無念だったに違いない。だから、清花はあの男の恨みをそのまま受け継いで、今も生きている。
暗殺者集団〝光の王〟。それが、今、清花が身を置いている場所だ。
三年前、宮殿の外に打ち捨てられた彼女を助けてくれたのは、〝光の王〟の頭領光王(カンワン)だった。正確に言うと、清花を発見したのは光王ではない。〝光の王〟の副頭領守尹(スユン)だった。