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掌の浜辺

第4章 冬 - make -

8.雪の上の野球 -2-

 みんな一通りまわって、また3回りくらいしたあと、バットを振ってボ-ルを打った小野里さんは一塁の方に走り出した。
 「ゆうこ!」
 「はい!」
 私は転がってきたボ-ルをキャッチして一塁ベ-スにいるりょうこさんにボ-ルを投げ渡した。小野里さんはダイブして…
 「アウト!」
 「間に合わんかったか」
 苦笑いの小野里さん。でも、すぐ微笑みに変わった。体は雪まみれになっちゃっているけど。
 「ナイスファイト」
 センタ-にいるナオトくんが声をかける。
 「ども」

 次は、実戦みたいな感じで。ピッチャ-は平石さん、キャッチャ-は小野里さん、バッタ-は赤川さん。ライトがいなくなっちゃったけど、外野はケンイチさんとナオトくんの2人で守ることになった。あと、二塁が空いたから、ショ-トの私がセカンドになる。
 「行きま-す☆」
 振りかぶって、ボ-ルを投げる。
 「いよっ!」
 赤川さんの空振り。ボ-ルは、小野里さんのキャッチャ-ミットの中。
 「平石さん、本気ですね」
 「赤川くんも本気で来て」
 「わかりました」
 「あんまり飛ばすなよ」
 「はい」
 赤川さんの心の種に火がついたみたい。サングラス越しだから目は見えないけど、フォ-ムが変わったような気がした。小野里さんの忠告が入りながら。
 サザッと足元をならす赤川さん。ボ-ルを握りしめる平石さん。構え。
 「やっ!!」
 カキン
 コロコロコロ
 「あぁ」
 ピッチャ-ゴロ。アウト。
 「次、青葉」
 「あっ、はい!」
 私が呼ばれた。走ってホ-ムベ-スまで行く。赤川さんが、バットを渡してくれた。
 「しくじった」
 「大丈夫です。どんまいですよ☆」
 「ありがと。ガンバ」
 「はい!」
 バットを握りしめて、ホ-ムベ-スにその先を向けながら、私は平石さんのいる方に顔を向ける。
 「お願いします」
 「よろしくね♪」
 お互いに、構える。

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