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掌の浜辺

第1章 春 - story -

 「これ可愛~」
 生地が薄いピンク色で、模様も文字も何も印刷されていない非常にシンプルなデザインのTシャツを指さした叶。
 「いいな」
 叶は、自分に似合う服を選ぶセンスがある。一緒にショッピングに来るたびにそれを実感するから、俺の勝手な思いこみじゃないだろう。きっと。
 「あ」
 Old Nickと印字され、悪者的なキャラクタ-が刺繍されたダ-クグレ-のTシャツについていたアクセサリ-に目が行った。お買い上げ。家にダ-クグレ-のTシャツがあるからそれと合わせてみることにした。
 一方、叶はどちらの服にしようか迷っていた。
 「どうしよ」
 「さっきのTシャツよかったよ」
 「そう?」


よく半信半疑のまま
自分がほしいものを買っていた
小さかったときと

気持ちは
全然変わっていなかったって
初めて気づいた
それで後悔したこともよくあった
けど
1つだけわからないことがある
おしゃれに気を遣うようになったのは
いつころから
…だろう

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