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掌の浜辺

第1章 春 - story -

 「お-シュン!いつもに増して肩が落ちてるぞ」
 純は察しがよすぎる。オレは毎回返事に困るが、ど真ん中を突いてくれるから多少気が楽になる。
 「はは…どうしても好きになれね-から」
 「ま、それはわからんでもないが」
 「だろ-?」 「おはよう。あっ、やっぱり2人だけかぁ」
 未來の冗談は見抜けそうで見抜けない。本気にも思えるような言葉遣いが多いんだけど、それはオレの先入観にすぎないのかもしれない。
 「何か問題でも?」
 「って!いたのかよ!」
 「うん」
 はじめがやることは予想だにしないことばかりだ。ただ、こういうことを思いつく彼には本当に感心する。ま-、純とはじめのやりとりもおもしろいけど。
 それからは、ちょっとずつメンバ-が集まってきた。

 ブ-ブ-
 ブ-ブ-
 メ-ルだ。小野里さんから 「ようし。始めよう」
 何でこういうときに先生来るかな…タイミングよすぎだろと心の中で思ったけど、オレはばれないように携帯電話の画面を見つめた。
 【昼12:30 700号室 元野球同好会 部会やるから集まってください】
 先生の話を聞きながら、指を動かす。
 【わかりました^▽^】 「今週は赤川さん。頼むよう」
 「はい」
 ファイルを取り出したけど、あれがない。かばんの中をあさっても、見つからない。
 「…すいません。家に忘れてきたみたいです」
 ため息をつかれてしまった。仕方なく覚えている範囲でやることになったが、ぼろぼろだった。


得意になれない
そう思いこんでいるだけなのか
本当に
苦手意識が芽生えているからなのか
オレには判断できない
けど
どちらにしても
こいつのことを考えている
ことに変わりはないのかもしれない
実際は
そう思いたくないのだが
これが現実
…なのだろう

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