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掌の浜辺

第1章 春 - story -

29.引っ込み思案

おれのような
教授がいる大学がどこにあるだろう
こう考えるおれは傲慢だ


 「次、法学か?」
 「いや。今日休み」
 「そっか」
 「おのさんは2講目ある?」
 「俺?空いてっから大丈夫」
 「ちょっと付き合って」
 「お」
 本当はこの時間に法学の授業はあったけど、俺はそれより聞き出したいことがあった。彼に。野球同好会について。

 階段を上っていく。このフロアのすぐ上がいつも野球同好会の部会をやっていた場所。そこで話した方がきっといいだろうと思った。
 ギュィ-
 パタン
 700号室へ入る。椅子に腰かけ荷物を置き、俺は話を聞り出した。もう核心から行く。そこが最も気になっているところ。
 「おのさんはいつまで野球同好会引きずっているの」
 返す言葉がなかった小野里先輩。黙りこんでしまう。
 「何か言ってくれないとわからない」 「わからん」
 「何?」
 「俺自身も何でこうなってんのか、よ-わからん」
 「ああそう。ならこれで。付き合ってくれてどうも」
 これ以上聞いても無駄だろう。俺は身支度してその教室から出ていく。
 ギュィ-
 パタン

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