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掌の浜辺

第2章 秋 - heart warming -

2.後方

悲しくてもこうしてみんなで文化祭に参加できた
ばらばらだった春と夏の季節がうそみたい
やっぱり小野里くんってすごいなって思った


 午後はケンイチくん、小野里くん、ナオトくんのシンフォニック・ロック(幻想的な音楽でスト-リ-性を持たせた感じっていうか)。曲と曲の間がつながっていて全部の曲でひとつの歌が完成するみたいな演奏会をするって言っていた。私たち、ゆうこりん、りょうこりん、叶ちゃん、私の4人はお料理講習会で、フル-ツサンデ-とア-ルグレイティを作ってお茶会をする。夜はクレ-プなんだけど、デザ-トクレ-プかごはんクレ-プかで悩んでいる。一応、両方ともレシピは配るけど2時間だからかんたんなのを作ろうかな。今は内緒(笑) そんな計画で、お昼の時間を過ごして打ち合わせするはずなのに。

 「んま!」
 「ちょっとスコ-ン食べないでよ!」 「あっ」
 「1個くらいいいだろ」 「ははっ…」
 「とか言って、また冷蔵庫に向かってるじゃん。お客さんの足りなくなるでしょ」
 りょうこりんが冷蔵庫の前に立ってナオトくんを遮る。おみやげに参加者全員に配るためのスコ-ンに手をのばしかけた彼の様子をゆうこりんはびっくりして見るだけしかできなかったみたい。その向かいの席、私の隣の小野里くんは苦笑い。
 「たっくよ」 「午後っていうか夜のクレ-プどうします?平石さん」
 ナオトくんは納得がいかないようだ。いや、納得しちゃだめでしょ、お客さんのなんだからって言いそうになった私。そのとき、夜のことでりょうこりんが私に尋ねてきた。
 「無視かよ!」 「午後がフル-ツだからねぇ…ポテサラクレ-プとか?」
 「あ☆それいいですね」 「……」
 なぜか全会一致(しなびれて意気消沈しているナオトくんを除いて)。私おどろく。ちょっと適当すぎたかなって思ったけどもしかしてよかった?
 「あれ。そういえば、バンドの方は?」
 りょうこりんは今度は女装のままのナオトくんに声をかける。
 「楽しみにしとけ」
 「パクリ?」
 「違うし!」
 からかうりょうこりんだけど、すぐ「冗談だよ」と、彼の右肩をとんとんとする。「そうしたら」と言いながら彼は冷蔵庫に手を伸ばして…
 「だ-め」
 「ちぇっ」
 相変わらずスコ-ンが気になっているナオトくんでした。

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