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掌の浜辺

第2章 秋 - heart warming -

 また店員さんを呼ぼうとする小野里くんを制止、さっき頼んだでしょって。もう飲んじゃったの? っていうくらい早い。まだ顔は赤くなっていないから大丈夫だと思うけど。ていうか、小野里くんにばれちゃったかな、私の考えていたこと。彼、案外鋭いからなぁ。
 「お持ちしました、生です」
 「ども」
 「そういえば、就活はどう?」
 うっ。聞かれたくない言葉だった。二呼吸くらい置いて口を開く。
 「全然決まらないよ。いろいろ受けてるけど。小野里くんは大学院行くのどうなったの?」
 顔色、っていうか表情? が、少し変わった彼が一言。
 「留年する」
 えっ? っていう言葉すら出せなかった。あまりにも唐突すぎない? って思った瞬間、彼が謝りながら訂正してくれた。
 「すまん。笑えない冗談で。なんとか大学院行く。ぎりぎりだなってゼミの先生には言われてっけど」
 「そっか。受かること応援してるよ!」
 「ども」
 食べながら飲みながらの会話は続く。

 「次いこっかぁ~♪」
 「カラオケしかね-ぞ?」
 やったぁ~☆ って気持ちになった。いい気分(*^^*) 酔っちゃった(>_<)
 居酒屋さんの前の道路をはさんで向かい側にちょうどカラオケ屋さんがある。信号が赤から青に変わる。横断歩道を渡って、カラオケ店内へと入っていく。受付を済ませて5分くらい待ってカラオケル-ムに案内される。部屋に入ったあとは飲みものを頼んで、店員さんは後にする。
 「ごゆっくりどうぞ」
 パタンと扉は閉じられる。
 「なに、歌おうかなぁ~♪」
 「ぼかろ?」
 「あっ☆イイネ~♪」


”うきうき”
カラオケに来るのもすごく
久しぶり
下手になっているかもって
ちょっと考えたりもしたけど
楽しむぞ
って思いの方がやっぱり強くなる

みんなもそうだと信じたいな
…なんか酔っちゃっているから
変なことしか言えなくなっている
それなのに彼はいつもと変わらない
うれしいな

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