
精霊と共に 歩睦の物語
第8章 共にする者
「小人さん?どこに行ったの?小人さーん!」
歩睦が小人を連呼して呼ぶ。
{あーもう!その『小人さん』って呼ばれるのイヤ!僕の名前はユティルテール・ノーム}
小人は怒った顔して現れた。
「あ、ごめん。名前聞きそびれたから…」
申し訳なさそうな歩睦。
{……ホントに何にも覚えてないんだね…}
歩睦の表情を見て、ユティルは直ぐに悲しそうな顔になる。
「えーっと…ユ、ユティー…」
名前を噛みそうになる歩睦。
{ユティル!ほら!呼んで!}
「ユティル…」
{うん}
満足そうなユティル。
「じゃ、ユティル!改めて、どうしたら、帰れる?」
{僕の手を取れば帰れるよ}
「じゃ、今すぐ帰ろう!」
歩睦は、ユティルの方に近づく。
{無理だよ}
ユティルはスッと、その身体を翻す。
「無理って…どうして」
{だって、僕は歩睦の身体に障る事を許可されてない}
「許可制なの?誰の許可がいるの?」
{……願えば、届くよ}
ユティルは少し強張った顔しながら携帯を持ってくる。
携帯を持っているユティルの表情は固い。
歩睦は携帯を受け取り、画面を確認する。
画面にコールの表示が出ている。
歩睦は無言でコールを押し、耳に当てる。
