テキストサイズ

精霊と共に 歩睦の物語

第10章 元に戻れるものは、戻して…

「歩睦!」
 楓は体育館に入る事は出来たが、剣道の試合をしていた試合場にたどり着かない。


 何重にも張られた亜空間。


「出でよ!我が僮(しもべ)!」
 楓は自分の従者の犬神を呼ぶ。

{…はい…}
 数匹の犬と頭に犬耳のある少年が現れた。

「結界を張って!できるだけ厚く。大きくね」

{かしこまりました}
 犬耳のある少年が頭を下げ消える。


 僕は従者。幼い時から主の側に仕えて、身の回りの世話をする者。

 景様が「『約束の刻』までは、普通の子供のように」との考えに従って、今まで学校の先輩として…見守るだけだったが、こんなに早くアチラの攻撃が来るなんて…

甘かった…

「どうか、ご無事で!」
 楓は、自分の霊力をフルに発動して、歩睦を探す。


  「これ以上。僕の大事なものを汚すな!」
 歩睦の声が空間に響く。


「歩睦!歩睦!どこだ」
 楓が周りを見回す。


  「もうやめろ!」
 歩睦の悲痛な声。


 亜空間の壁が波打っている。


「!これは…」
 楓が両手を重ね胸の前に力を集める。


  「悪しき『うろつく』影よ消し去れ!」
 歩睦の声と共に空間が壊れはじめる。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ